イヤフォンからは嫁の声だけではなく謎の男の声も聞こえてきた。
一瞬パニックになった。

 

■これまでのお話
とあるオーガの手記その1
とあるオーガの手記その2
とあるオーガの手記その3
とあるオーガの手記その4
とあるオーガの手記その5
とあるオーガの手記その6
とあるオーガの手記その7
とあるオーガの手記その8
とあるオーガの手記その9
とあるオーガの手記その10

 

電話相手の声も盗聴器が拾っているのか！？
この盗聴器の感度半端じゃねえなおい！
・・・とか思ったが、そんなわけはない。
嫁が携帯電話をスピーカーモードにしているのかとも考えたが、そうすると会話の内容がおかしい。
そんな事を0.00000000000001秒の間に考えていた俺。
会話は続く。

 

嫁「じゃあ適当に作るねー」
男「うん、メンバー集めておくよ」

 

何のメンバーじゃい！
合コンでも開くんかい！

 

うおおおおおお！
これはもう間違いなく男が俺のマンションにいる。
なんでだ、なんでこんな事になってるんだ・・・。
やばいパニックだ。

 

自分でパニックと認識できている時点でほんとのパニックじゃないのかもしれないけどとにかくパニックだこれは。
あたふたしてしまう。
なぜかさっきからカバンをあけたりしめたり何度も繰り返してしまう。
パニックの時ってなぜか単純な反復行動をやり続けちゃうよね、なんてのを今思えば感じる。

 

 

その間も嫁と男は楽しげに会話をしている。

男「今回はあんまり落ちたりしなくてよかったねー」
嫁「そうだね、人減ってるからかなあ？」

落ちるってなんだよ！
どっから落ちるの！？ガケ！？

 

 

もうこの仲良さげな会話を聞いているだけで頭が破裂しそうだ。
いてもたってもいられなくなった俺。
もう行くしかない！
コンビニへ！
俺は近所のコンビニに再度足を運び、缶ビール（ロング缶）を購入し、グイっと飲み干した。
こんな時でもビールはうまい。
一瞬、部屋に乗り込んでやろうかとも思ったが、今それをしたところで言い逃れされてしまっては意味がない。
こういう時は確たる証拠というやつを掴まなければだめだ。
みたいな事を昔、伸介の出ているテレビ番組で言っていた気がする。

 

 

とりあえずビールを飲んで落ち着いた俺は信頼できる友人に電話をしてみた。

友人「もしもし？」
俺「おお！○○か、今大丈夫か？」
友人「今仕事中だ。急ぎか？」
俺「いや・・・急ぎといえば急ぎなんだが・・・」
友人「なんだ、言え」

 

俺はなるべく掻い摘んで事情を友人に説明した。

 

友人「そうか、なるほど。とりあえず絶対に中には入るな。嫁には何も悟られるな」
俺「うんわかった・・・どうすればいいの俺」
友人「盗聴器はちゃんと録音機能ついてるんだろうな？」
俺「うん、録音してる」
友人「なら別に今焦って何かする必要はないから漫画喫茶でも行ってこいよ、進撃の巨人って知ってる？おもしろいぞ」
俺「知ってるよ・・・」
友人「そうか、とりあえず夜まで時間を潰せ。夜また電話するから」
俺「わかったありがとう」

 

 

この友人というのは俺の中学時代の同級生で、同級生の中でも圧倒的に勉強ができるやつだった。
お互いゲームが大好きだったので中学の時は毎日のようにいっしょに遊んでいた。
高校は頭のできが全く違うので別々のところに進学したが、それでも毎週のように遊んでいた。
いわゆる親友というやつかもしれない。
彼は今、弁理士をやっていて、めちゃくちゃ忙しそうなのであんまり会う機会もないのだが、それでも年に数回は飲みにいったりしている。
こいつが本当に頭がきれるやつで、何かトラブルとかがあっても簡単に解決してしまうやつなんだ。

 

 

中学生の頃の話だが、俺と友人は当時ゲーセンで格闘ゲームにはまりまくっていた。
少し家から遠いが、1プレイ50円でできるゲーセンがあるという話を聞きつけて、そのゲーセンで格ゲーを楽しんでいた。
で、まあ当時はよくあった事なんだろうが、両替機の前でヤンキーに絡まれてかつあげされそうになったんだ。
完全にテンパった俺。
もうこれはどうしようもねえなあと思って財布を出したそのとき、友人が横から割って入ってきたんだ。
その後友人はヤンキーに対して何か色々口で攻撃してた。
それに対してヤンキーも最初は言い返していたのだが、だんだん顔が般若みたいになって最終的に友人を殴った。
その瞬間、友人は大声を出し、店員がかけつけてきた。

そして結局そのヤンキーは警察にお縄となった。
俺と友人も事情聴取で時間を取られはしたものの、かつあげはされずに済んだ。
助かった。

友人曰く、こういう時は絶対に周りに人がいない場所にいってはいけない。
周りに人がいる状況で絡まれたら、挑発して一発殴らせてから警察にきてもらうのが一番てっとり早いんだとの事だった。

確かにそうかもしれないけど実際挑発とかできないし、度胸のあるやつだなあと思った。
その後も、クラスの揉め事とかトラブルとか、とにかく友人は何でもあざやかに解決する事が多かった。
普段はゲーム好きのオタクのくせにそういう時は妙に饒舌になる。
友人ではあるものの、別世界の人間のような感覚だった。

 

 

とにかくそんな友人なので、嫁との関係がこじれるのは間違いないというトラブルが発生している今、真っ先に頼る相手として頭に浮かんだ。
友人が弁理士じゃなくて弁護士なら話はもっと早かったのになあ、、、なんて思ったがそれは仕方ない。
友人に言われたとおり、漫画喫茶に行く。
これ以上酒を飲むと夜までアルコールが抜けない気がしたのでビールは我慢した。

 

 

何気なくドラゴンボールを手にとってみたものの、鳥山明の絵を見ているとドラクエ10を思い出してしまうのですぐ読むのをやめた。
仕方ないので、一番気が休まりそうなちびまるこちゃんを1巻から読み始める事にした。
ちびまるこちゃんの初期は絵が下手糞なのがたまらない。
内容的には初期が圧倒的におもしろい。
そんなどうでもいい事を考えながら読み進める。
ちびまるこちゃんは精神安定剤としては優秀なようだ。

 

 

そして夜7時ぐらいに携帯電話が鳴った。
友人からだ。

友人「お前って今日会社休んでるんだよな？」
俺「そうだよ」
友人「奥さんにはなんつってんの？」
俺「普通に出社してる事になってる」
友人「なるほど、いつも会社から帰るの何時ぐらい？」
俺「22時～24時ぐらいだよ」
友人「ならまだ大丈夫だな。飯食いながら話そう。丸の内これる？」
俺「うんわかった行くよ」

そういうわけで丸の内へ。
友人が気を利かせてくれて個室のお店を抑えていてくれた。

 

 

友人「お前顔やばいな」
俺「そりゃこんな状況だから仕方ないだろ」
友人「そうだな。で、お前どうしたいの？」
俺「どうしたいって・・・よくわからんよ」

 

 

友人「今までお前から聞いた話だと奥さんは100%浮気してる。あとはもうお前がどうしたいかだけだ」
俺「そ、そうか」

 

浮気はしているだろうという事は盗聴器から男の声が聞こえてきた時点でわかっちゃいたが、こうもはっきりと他人の口から言われるとやっぱりショックだった。
俺は一体どうしたいんだろう？
離婚するべきなんだろうか？

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Flooded With Business 管理人より一言

昔のゲーセンって今と違って物凄い治安悪かったですよね。
ガチでヤンキーのたまり場になってるとことかあって、普通に人がいっぱいいる店内でかつあげしてるやつとかいました。
ゲーム好きなオタク的には怖いから行きたくない、でもゲームはやりたい、ああどうしよう！！！
そんなジレンマがある場所でしたね。

ちなみに僕は喧嘩は明らかに弱いほうだったのですが、負けず嫌いで妙に自信家だったのでヤンキーに絡まれた際は猛然と立ち向かっていくタイプでした。以外とガチでやりあってくるヤンキーは少なかったので、大事に至るケースはほとんどなかったのですが、1度だけやばい事がありました。
それは相手が朝鮮高校の方々で、口論しているとどこからともなく大量のお仲間がわいてきたわけです。
気づくと10人ぐらいに囲まれていた僕ちゃん。
あの時は死を覚悟しました。
彼らの目つきはマジで怖かったです。

結局どうなったかというと走って逃げました。
足は速いほうだったので奇跡的に僕は逃げ切る事ができましたが、追いつかれた友人は財布ごと取られていました。
ポイズン！

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