専業主婦。
なんという甘美なる響きだろうか・・・。
主婦業のみに従事するという専門家。

 

本題に入る前に少し専業主婦について書いておこうと思う。
僕自身、母親はバリバリゴリゴリのキャリアウーマンタイプであるし、大人になってからも専業主婦をしている人と深いかかわりを持つ経験があまりなかった。
幼少の頃、学校が終わったあとに友達の家に遊びにいくと、友達のお母さんがいたりしてちょっと不思議だなあと思ったものだ。
何でこの人、平日の4時とかなのに家にいるんだろう？、と感じる程度には大人は皆働くものだと思っていた。
なので専業主婦というものは、どこか幻想的で、物語の中だけに登場するかのような、そんなイメージを持つ存在だった。

 

 

しかし僕はドラクエ10にどっぷりとはまり、そこで多くの専業主婦達と出逢った。
そこには既存の価値観を破壊するような様々な衝撃的な世界が存在していた。
そう、僕はアストルティアで初めてまともに専業主婦達と触れ合ったのだ。

 

 

ところで最近よく言われるのは専業主婦の市場価値。
専業主婦の様々な行動（炊事、洗濯、育児、家計管理）などを年収ベースにすると約500万円に相当するという主張。
皆さんもどこかで1度は目にした事がありませんか？
これは女性の立場を守るためのある種の詭弁であり、実際にはほとんどのケースにおいて専業主婦の労働対価として年間500万円というのは不適切であると僕は考える。
なぜならば、そもそもこの専業主婦の労働対価の考え方というのはマルクスが提唱していた労働価値説に基づいているためだ。
労働価値説自体、マルクスがアジテーターとして手腕を発揮するためのぶっ飛び理論だったのは疑う余地がないわけで、専業主婦の価値が年間500万円だ！というのもただの専業主婦アジテーターの暴論でしかない、と僕は考えている。
しかしながらこんな話をしても、世の中からヒンシュクを買うだけであるから、僕はこんな話は基本的によっぽど仲良しの男女としかしないし、専業主婦の話題が出たらとりあえず「でもやっぱ家事って何だかんだ大変だし、ずっと家にいるとストレスもたまるよね」と言っておく。
この台詞こそ、アストルティアで多くの専業主婦達と交流し続けた結果編み出された究極の無難かつ当たり障りない発言かつ、相手に好感を持ってもらえるものなのである。
是非、専業主婦との交流方法に悩んでいるアストルティアのネカマ諸君はこの台詞を活用していただきたい。

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ここ、アストルティアには実は専業主婦が非常に多く生息している。
識者の間では、アストルティアに毎日訪れる層、いわゆるエリート国民の約30%が専業主婦ではないかと言われているほどだ。
彼女達はその余りある時間のパワーを存分に発揮し、日替わり討伐、強ボス討伐、キラキラ拾い、ライン工、ふくまねき回し、レアボス回しなどといった行為を毎日繰り返し、アストルティア経済を支えている。
トップ層職人が儲かるのも、ある種彼女達のお陰なのである。
前置きが長くなってしまったが、今回の記事ではそんな専業主婦にスポットをあててみたいと思う。

 

 

■ケース１：専業主婦Aさんの場合

専業主婦であるAさんは現在38歳。
旦那さんとは結婚して約15年が経過しているそうだが、結婚以来1度も働いた事がないそうだ。
Aさん曰く、本当は仕事がしたかったが、できちゃった結婚をしてからというものの、なし崩し的に仕事をしないままここまできてしまったのだそうだ。
子供は一人のみで、もうすぐ高校に進学するそう。
元々ゲームにはあまり興味がなかったが、スマホのソシャゲでは軽く遊んでいたAさん。
ソシャゲで知り合った友達がドラクエ10にはまったそうで、その友達に誘われてAさんも2年ほど前からドラクエ10を始めたのだそうだ。
最初は操作も難しいし、何をしたらいいのかよくわからなくて途方にくれたそうだ。
（誘ってくれた友達とはプレイする時間があまり合わなかった）

 

しかし、初めて1ヶ月ちょっと経った頃に加入したチームがAさんのライフスタイルを一変させた。
そのチームはたまたまグレンで募集していたチームに何の気なしに入ったチームだった。
「初心者歓迎、お手伝いする人いっぱいいます」
みたいな白チャットが魅力的に感じ、チーム加入したAさん。

 

そのチームに加入してからは怖くて行けなかったけど興味はあったコインボスも連れて行ってもらったり、ストーリーのボスもチームメンバーがいっしょに行ってくれて倒せたのが凄く嬉しかったとの事。
その時にいっしょにptを組んで手伝ってくれたチームサブリーダーをしていたウェディ男のBさんのパラディンがかっこよくてたまらなかったそうだ。
それからは何をするにもチームメンバーといっしょにやるようになり、ピラミッドをしたり、ふくびきで当たったコインボスを皆といっしょに倒したりして、段々とドラクエ10が楽しくなっていったのだそうだ。

 

そうこうするうちに気づけばドラクエ10を毎日プレイし、1日のプレイ時間は10時間を越えるほどになっていった。
今は全盛期ほどは長時間プレイはしていないそうだが、全盛期の時の1日のタイムスケジュールを教えてもらった。

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06:30　旦那さんと子供の弁当を作り洗濯機を回し、二人を起こす。
07:30　旦那さんと子供を送り出し、ドラクエ10開始
07:30～13:00　延々とドラクエ10をプレイ。午前中は日課をしてチムクエに精を出す。時間があればキラキラ拾いもする。
13:00～16:00　少し遅めの昼食をとり、お昼寝タイム。起きたら洗濯物を取り込む。たまに家の掃除もする。
16:00～19:00　ドラクエ10を再度プレイ。この時間帯になると結構チームに人がいるのでptを組んだりする事もある。
19:00頃　晩御飯の用意をする。
20:00頃　旦那さんが帰宅すれば3人で晩御飯を食べる。旦那さんは外で食べる事も多いため息子と2人の場合もよくある。
21:00～力尽きるまで　ドラクエ10をプレイ。誰かに誘ってもらえると嬉しいので自分から落ちる事はなく延々とプレイし続ける。場合によってはそのままドラクエ10をプレイし続けて徹夜をして弁当作りをする場合もある。

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これで大体1日のドラクエのプレイ時間は8時間～12時間程度だったそうだ。
とにかく人に誘ってもらえるのが嬉しくて、そろそろ寝なきゃなあと思いつつも延々とプレイしてしまうのだそうだ。
チームが凄く大事な存在になっており、チームレベルを早く上げたいといつも考えている。
だから朝はまずチームクエストを優先してプレイするのだそうだ。

 

 

■インタビューをしてみた

いつものようにインタビューを行った。
一部読みづらい文章や表現については筆者のほうで加筆・修正を加えている。

—こんにちは、今日は色々と聞いていきたいと思います
はい、よろしくお願いします。私は凄く普通の人間なので、インタビューしてもらっても何も面白くないと思いますが･･･。

—そんな事ないですよ。今回急遽インタビューに答えてくださって凄く助かりました。皆どうやら専業主婦という存在に興味を持っているみたいなんです
そうなんですね。でも本当にただ普通に家事をして、ゲームするだけの日々です。

—ドラクエ10にはかなりはまっていらっしゃるようですが、なぜここまではまったんだと思いますか？
あんまりゲームは得意じゃないんですがドラクエ10はオンラインだから色んな人と喋れるし、チームがあってそこで仲良しの人たちといっしょに色々するっていうのが楽しいからかなって思ってます。

—ドラクエ10でptを組む際はほとんどチームメンバーで組むんですか？
そうですね。野良は昔色々と怖い思いをしたのでチームの人としか遊ばないようにしています。あとはあまり多くないですがチームメンバー以外のフレンドの人とも遊びます。

—怖い思いとはどういう？
グレンで募集しているptに入れてもらって強ボスに行ったときなんですが、指示っていうんですか？あーしろこーしろって凄くいろいろ言われて･･･。頑張って言う事を聞こうと思ってやってたんですが色々いわれて焦ってしまって余計失敗して。私は僧侶をよくやるのですが、最後の方はその人の口調も荒くなってきて「お前のせいで全滅ばっかいつもはこんなボスで全滅とかしない」みたいに言われて。それで怖くなってしまいました。

—それは怖いですね。僕もそういう事はよく思ったりするタイプですが胸のうちにしまってチャットではにこやかに「全然問題ないですよ、次いきますか！」といった感じの爽やかなタイプを装っています。オンラインゲームは直情型のプレイヤーも多いのでその辺慣れてない人はびっくりしちゃいますよねやっぱ。
そうですね･･･。ドラクエってこんな怖いゲームなんだってその時は思ったんですが、でも入っているチームの人たちは皆優しい人ばかりだったし、仲良くしていたので。なのでそれからはチームの人達とだけ遊べばいいかなって思ってそうするようにしています。

—なるほど、Aさんはチームクエストを頑張ってやっているそうなんですが、今のチームではトラブルとかはないんですか？
前にチームクエストをやる人とやらない人で口論みたいになった事がありました。私とあと3人ぐらいがチームクエストをよくやっているんですが、その中の1人が他の人にもチームクエストをもっとやってというような事を言い出して、チームが険悪なムードになりました。私は自分がチームクエストをやりたいからやっているだけなので、ほかの人にやってほしいという事はあまり思った事がないのですが、そういう意見を言うと角が立ちそうだったので無言になっていたんです。そうしたら皆にAさんはどう思うの？って聞かれて凄く困ってしまいました。

—その時は結局どうなったんですか？
チームのサブリーダーのBさんという方が間に入ってくれて、チムクエはやりたい人がやる、やりたくない人はやらなくていいそういうルールでいこうよとまとめてくれて騒ぎは収まりました。その時フレンドチャットでBさんから「心配しないでね。俺がチムチャで言うよ」ってきてたので、上手く収めてくれて凄くかっこいいと思いました。

—Bさんはウェディだそうですね。やっぱりウェディだと100倍増しでかっこよく感じますか？
ウェディだからどうとかは･･･正直あるかもしれません。
やっぱりキャラはカッコいい方がいいかなと思います。
プクはかわいいし、ドワーフも好きなんですけど、ずっと見ていられるのはやっぱウェディかな･･･。

—ちなみにそのBさんとはいわゆる相方というやつなんですか？
はいそうです。相方っていうのはよくわからなかったんですが、よくいっしょに遊ぶようになってからしばらくしたらBさんに相方にならない？って言われてOKしました。OKしたあとでBさんに色々聞いたら相方っていうのはゲーム内で付き合う事みたいですね。

—結構衝撃なんですが、Bさんはあなたが結婚してる事は知ってるんですか？
知ってます。でもあくまでもゲーム内だけの付き合いだから関係ないんだって言ってます。私もそういうもんなのかなぐらいにしか考えてませんでした。でもなんかこうやってあらためて言われるとまずい事してるのかな？ってちょっと考えちゃいますね。

—今回はあくまでもインタビューなので僕個人の見解は述べませんが、Bさんとはリアルで会ったりはしてるんですか？
それはないです。でも半年前ぐらいから会いたいってよく言われるようになって。写真も見せてって言われたりして。写真は恥ずかしいので電話ぐらいならいいよというと、それ以来たまにスカイプをするようになりました。

—スカイプしてるんですか！それは凄い！家族には内緒なんですよね？
そうですね。言ったらドラクエ取り上げられてしまいそうですし。でも私はBさんに会いたいとかは思わないんですよ。結婚して最初は大変だったんですが、子供が中学にあがってからはあまり手間もかからなくなって、家にいてやる事もなく過ごしてきたので、ドラクエ10は凄く良いゲームなんです。これを取り上げられてまた前みたいな暇な生活になるのが嫌なんです。

—そうなんですか。その感覚はちょっとわからなくもないです。社会性って大事ですよね。
社会性？っていうのかわからないですけど、仕事もしてないですし習い事とかもしていないので普段人と交流する事があまりないので、ドラクエで色んな人とお喋りしたり遊んだりできるのが凄く楽しいです。

—なるほど、何となくAさんがドラクエ10にはまった理由だったり、やり続けている理由がわかりました。
あんまり戦闘とかは好きじゃないんですよ。皆といっしょに遊べれば何でもいいです。すごろくとか、ドレスアップとかが1番好きかな。

—僕とはかなり趣向が異なりますね。そろそろ文字高もOKなので最後に質問です。旦那さんとドラクエどちらかしか選べないとしたらどちらを取りますか？
旦那です（笑）

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これがリアルな専業主婦である。
アストルティアに多く生息する専業主婦。
しかしその実態に近づいたものはそれほど多くなかったであろう。
今回のインタビューを通じて、何となくドラクエ10というゲームが担っている一つの役割が見えてきた。
ドラクエ10というゲームは、ゲームという枠組みを越え、社会性を生みだす装置としての役割を果たしているのかもしれない。

 

少し文字数が多くなってしまったので本記事は前後編に分けたいと思う。
次回の後編ではもう1人の専業主婦の方にインタビューを行った。
Aさんとは異なる、過激な思想を持つこの女性に僕は翻弄されっぱなしだった。

 

ちなみに念のため書いておくがこのシリーズはガチンコの内容なので、オチとかは特にない。
淡々と事実が語られるのみなのである。

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